あそびごころん新開
キョーコは蓮に聞き返した。
「そう、ストレートの黒髪だとちょっと
地味かなあと思って。」
蓮の言葉にキョーコは衝撃を受けた。
地味ですって?!!
キョーコは忌み嫌うワードを蓮に言われ
て愕然とする。
いつもの栗色に染めた人工の髪色がいい
と?!
「二時間ほどお待ちください。カラーリ
ングしてまいります!」
憤然とするキョーコにヘアメイク係が
慌てる。
「髪を少し巻いてみましょう!」
「いかがですか?敦賀さん。」
ヘアメイク係はドヤ顔で蓮を見た。
毛先に軽くウエーブがかかり、
メイクもさきほどより濃いめになり、
お嬢様風の美少女になった。
(…キョーコちゃんから遠ざかったな。)
「とてもいいですね。ありがとう。」
蓮はヘアメイク係に微笑んだ。
キョーコは絶望的な気分だった。
黒髪でノーメイクだと全然ダメで
地味ってことなんだ…。
「最上さん、よろしく。」
「は…はい。」
キョーコちゃんでなく最上キョーコ
とのラブシーンにはりきる蓮と比べ、
頭のなかを『地味』がこだまするキョーコ
は意気消沈していた。
「カーット!京子ちゃん、もっと気持ち
込めて演技して。」
新開監督に注意を受ける。
「……はい。」
さらに沈むキョーコ。
「最上さん、どうしたの?元気ない
ね。」
蓮が心配そうに尋ねる。
「そんなことありませんっ!元気いっぱ
いですっ。」
いよいよラブシーン。
「愛してるよ、もう君なしでは生きてい
けない。」
さすが、抱かれたい俳優No.1。
眼差しといい、唇といい色気駄々漏れ
でキョーコはクラッとした。
しかし、『地味』女優最上キョーコ
ここで怯んでは敦賀さんに負ける気が
すると気持ちを奮い立たせた。
「私も同じ気持ちよ。」
キョーコは妖艷に蓮を誘惑するように
上目遣いに見つめる。
蓮はキョーコの眼差しに吸い込まれる
ように顔を近づけ、深く情熱的なキスを
した。
「カーット、蓮、いい感じだ。」
新開監督は満足げにOKをだした。
「最上さん、お疲れさま。」
ごきげんな蓮と対照的に暗く落ち込む
キョーコ。
「お疲れ様でした…。」
挨拶して帰ろうとするキョーコの腕を
蓮は押さえた。
「最後のシーンが残ってるよ。最上さ
ん、先に準備しなきゃね。」
蓮は神々スマイルを浮かべながら
遠くを指差した。
(…あ~、ありましたね。そんなシーン。
もうどうでもいいです。最上キョーコ、
地味返上ならどんなことでもやります!)
そう、最後はベッドシーン。
キョーコが未成年のため、胸やビキニ
ラインなどは画面に撮さないが、全裸に
なり、蓮が上に跨がる形となる。
蓮も全裸になり、臀部が露出するため
話題騒然で集客が見込まれていた。
「蓮、うまくいかなかったら今日、
家でキョーコちゃんと練習してこい
よ。」
新開監督の軽口に
「うまくいく自信ありますから」
蓮は返していたが、キョーコにそんな
話は耳に入らず、地味返上、地味返上を
呪文のように繰り返すのだった。
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