懇願 まいにち頑張る。
映画の予告編が怖すぎると話題にもなりました。
大好きなお母さんが帰ってきて喜ぶ双子の二人だったんですが、
静かな映画で、淡々と物語が進むんですが、ホントに雰囲気が怖いんですよ。。
そしてついにある日、兄弟は行動を起こすんです!
本当のお母さんはどこ?といった質問に、
いや〜めちゃくちゃ後味悪いなー!!
マインドマップで懇願を徹底分析
※BL妄想小説です
閲覧にご注意くださいね
「一弥さん!」
ノックが響く。
控え室のドアが開くと、血相を変えた
男が控え室に飛び込んできた。
さっきヘルプを任せてきた男だ。
「早く戻ってきてください。
あの客、俺じゃ全然手に
負えません。
何か今日すげぇ機嫌悪く
ないすか?」
先月入店したばかりの男は、
弱り果てた顔で懇願してきた。
「ごめん、いま行く」
店に入った時までは、
普通だったはずだ。
何が客の地雷を踏んだのか。
ボックスに戻ると、同伴してきた客は
誰も寄せつけない形相で座っていた。
磨き抜かれた灰皿に、細く華奢な
煙草の吸殻が既に三本になっている。
この店では銀座のクラブ同様、
二本で灰皿を交換する決まりだ。
よほどの急ピッチで吸っていたのが
窺える。
「待たせてごめんね。
モエちゃん、どうしたの?」
「さっきの話、思い出したら
やっぱり納得いかないのよ。
ねぇ、何で駄目なの?
また婚約者の振りしてって
言ってるだけじゃないのっ」
以前、田舎に戻されるのを阻止する
ため、二宮が両親の前で婚約者の
振りをした客だ。
隣に座った早々きつく睨まれる。
そう言われても、何度も振りを重ね
れば重ねるほど追い詰められるのは
彼女のほうだ。
「けど、今度は田舎にまで
挨拶に行くってのは…近所の
人にまで知れ渡ったら、
あとでモエちゃんが困らない?
どんどん大事になってしまう」
「ちょっと、一弥冷たくない?
ナンバーワンになれたから
あたしのことなんてどうでも
いいとか思ってんじゃない?」
そう言われても仕方がないかも
しれない。
客のためなら何でもする。
メールには全て返信し、どんな時間の
電話だろうと嫌な顔一つしない。
ゴキブリだって退治しに出向いた。
でもそれらは、客のためじゃない。
自分の指名のため、対価のためだ。
本当の優しさじゃなかった。
その場凌ぎの優しさ。
「なによ、もう帰る!」
引き止める手も振り払い、
客は立ち上がった。
ろくに宥めることも出来なかった客を
店外まで見送り、戻るエレベーターの
中で一人何度もため息をつく。
ちゃぶ台の前で、握りしめたスマホを
見据えていた男を思い出す。
ただのメールに、返事をするか否か
悩み決断していた。
あれが大野のやり方。
思慮深く誠実、それが大野の指名率の
高さの理由なのだろうか。
客はその誠実さに惹かれて集まるのか。
───ふざけるな。
だったら余計に何故、と思う。
何故、俺だけ騙したんだ。
どうしてあの時本当のことを言って
くれなかったんだ。
すぐに打ち明けてくれさえしていれば
俺は───。
俺は……何だろう。
「一弥、
七番の新規のお客さんが
おまえに来てほしいって」
フロアに戻れば、奥のボックスを
ボーイが示した。
大野のいるテーブルだ。
何やら盛り上がり、一際賑やかに
感じていた場所だった。
もう十ニ時も回った時刻。
酔いも回っているのだろう。
「来た来た、やっと
ナンバーワンが来た~!」
「うわ、色白で美人やね。
この人やったら、
うちらの店でも一番やわ」
二人の女性客は騒ぎ立てる。
顔を見合わせ、からからと笑う。
単に酔っぱらっているだけでなく、
根っから突き抜けたノリの女性たち
らしい。
「『エンジェルリップ』の
子たちやって」
挨拶を済ませ、ソファに座る間際に
西畑が耳打ちしてきた。
風 俗嬢らしい。
手っ取り早くいい収入を得つつも、
ストレスの多い重労働。
精神的にもタフでなければやって
いけない彼女たちは、遊ぶとなれば
燃え尽きるほど派手に遊ぶ。
「じゃあ、俺はこれで。
あとは一弥に…」
立ち上がる男の腕を、関西弁の子が
遠慮なしに引っ張った。
「ちょ~お、待ってよ。
お兄さんも残ってよ。
これからゲームすんのに、
人数減ったら面白くないやん」
「ていうか、イイ男には
残ってもらわないと困るのよ」
「何やそれ、俺やったら
おらんようになってもいい
言うことちゃうやろな?」
西畑がツッコミを入れ、
笑いが巻き起こる。
否定されなかったことに西畑が可愛く
拗ねてみせ、再び笑いが起こるのも
いつ
のパターン。
西畑は場を和ませる空気を持っている。
「じゃあ、始めま~す!」
席に残った六人で始まったのは、
定番の王様ゲームだった。
この手のゲーム自体が二宮は好き
ではないが、王様になるのが最も
苦手だ。
ある意味外れを引いたようなもの。
人への命令は、簡単過ぎれば皆白けて
しまい、難しすぎても引かれてしまう。
こんな場だから、その内容も
セ クハラなものばかり、ますます
匙加減は難しい。
新規客なら尚更だ。
そろそろ自分にその番が回ってきや
しないかと、二宮はびくびくして
構えていた。
引いたのは客の一人だった。
「そんじゃ、
二番と三番でキッス~」
「えー、ありがちやなぁ」
「そんじゃ変更、
二番と三番でセッ クス~」
「マジで?
うちやったら金取るよ?」
下 ネタが上がる笑いの中、
確認した二宮の棒は三番だ。
二番は大野。
起こりがちな展開だった。
王様ゲームで男とキスする羽目に
なったのは既に数知れず、西畑と
など片手で足りない回数はしている。
「えぇ~っ!
男同士でセッ クスなんて
勘弁してくださいっ」
こちらが嫌がってみせればみせる
ほど、場は盛り上がる。
「セッ クスはマズイですって。
店の営業危うくなりますから。
キスでお願いします」
ふかしか本気か、ゲームの輪に
入っていた新人ホストが、焦った
表情で締める。
大野だけが何も言わなかった。
左隣の男の横顔を見ると、この場に
あるまじき難しい顔でテーブルの
一点を見つめていた。
いまにも眉間に皺を刻み、腕組でも
しそうな表情だ。
「…大野、こっち向けよ。
そっち向いてたら出来ない」
「あ…あぁ」
明らかに戸惑ってる反応に苛立つ。
何だよ、
その気乗りのしなさそうな顔は。
こんな品のない遊びは嫌だとか
考えてるんじゃないだろうな。
こっちだって気が乗ったりする
ものか、場の空気を冷やしたく
ないだけだ。
二宮は男のタイを引っ掴んだ。
抵抗を感じ、乱暴気味にぐいっと
引っ張り寄せる。
首を引っ張られ、男は観念したように
身を寄せてきた。
周囲が囃し立てる。
「舌を 入れろ」だとか、何とか、
言いたい放題。
他人の不幸を肴に盛り上がる。
唇に一瞬の感触を感じた。
軽く押しつけただけで離れようと
する男に、周囲は非難のため息。
二宮はネクタイだけに留まらず、
スーツの襟も引っ掴んだ。
いまさらキスくらい六十間近の客に
だってしている。
あんただって同じじゃないか。
年が二回りも三回りも違う女に
出来て、俺が相手では嫌だとでも
いうのか。
訳の判らない苛立たしさだった。
二宮はぺろっと男の唇を舐めた。
舌を 突 っ 込むつもりが、男が逃げ
退いたせいで入れ損なう。
間抜けに舌を 突 き出す羽目になって
しまう。
二宮は、カッとなった。
「おまっ……」
文句をいうつもりで思わず飛び出した
言葉は途中で途切れる。
男の顔に、毒気を抜かれる。
大野は顔を赤くしていた。
一目で判るほど赤らんだ顔は、
ご丁寧に耳朶まで染まっていた。
いつも落ち着き払った表情を見せる
男には不似合いな、その顔色。
「おお…の……」
驚いて上げかけた声を、
男の唇に 吸い取られる。
誤魔化そうとでもいうように襲い
かかってきた大野は、二宮の唇を
封じた。
「…待っ…」
両手で頬を包まれる。
大きな手のひらに埋まり、二宮の
顔は身動きが取れなくなった。
躊躇なく送り込まれた 舌は 温度が
高くて、大きく厚ぼったい。
悲鳴が聞こえた。
客の女の子たちの黄色い悲鳴。
歓声だ。
でも、
そのあとはよく判らなくなった。
上顎のざらついた部分を大きな 舌で
擦られ、背筋に震えが走る。
竦んでしまった 舌を あやされ、
全身の 力が抜け落ちる。
キスが終わる頃には、スーツの
襟元を握りしめていたはずの手は、
縋るみたいに爪を立てるだけに
なっていた。
「次、あたし!
あたしにもして!」
冗談っぽく挙手をした客の隣で、
二宮はしばらく自分がどんな表情を
しているのか不
安でならなかった。
続く
14話でやっとこ、初ちゅ~
(王様ゲームですが💦)
じわりじわり……です。
アメンバーについては、こちらにマメに
来てくださり、お話にきちんと「いいね」
残されていない方は整理しております。
整理しております。
本当は読んでいないのに「いいね」だけ
残す行為はお止めください。
わりと判るものですよ…
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懇願 ZOOM-ZOOM
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大好きなお母さんが帰ってきて喜ぶ双子の二人だったんですが、
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いや〜めちゃくちゃ後味悪いなー!!
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