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A side
「猫さん、どこー?」
薄暗くなった森に聞こえるのは、まあくんの優しい声。
まあくんはさっきまで怖いと思っていた森も、今は猫さんに会える喜びで、全く怖くありません。
『みゃあ…』
どこからともなく聞こえてくる猫さんの声。それに、どこか心を震わすような甘い香りがしてきます。
「猫さーん。どこなのー?」
高い木の間、細く長く続く道を進んでいくと、平たい丘が見えてきました。
月の光に照らされて、とても幻想的な小高い丘。 先程よりもより一層強い香り。何かのお花の香りなのか、猫さんの香りと同じ香りが、まあくんの鼻を掠めます。
まあくんは、心の中で確信しました。
「あそこだ。きっと、あの木の下に猫さんがいるんだっ」
手に持った籠を握りしめ、丘の上の木を目指し、まあくんは一目散に駆け上がっていきました。
「猫さんっ 猫さんっ」
遠くから見た時はわからなかったその木は、近づくにつれ枝いっぱいに白い花をつけた不思議な木です。
「すごい。まるで雪が降り積もったようだ。」
花が月明かりを反射して、まるでその不思議な木が夜空に浮かび上がったように見えます。
まあくんは、花の美しさに目が奪われ上を向いて歩いていると、その木の根元に誰かが横たわっているのが目に入りました。
「もしかして、お化け?!」
まあくんは恐る恐る近づいて行きます。
1歩、また1歩と近づき、月明かりの中、目を凝らしてよく見てみると
「わあっ なんて可愛らしい子だろうっ」
白い花の木の下で横たわるのは、肌の白い可愛らしい男の子でした。透き通った肌にすっと伸びた鼻。可愛らしい薄い唇と、あご先には美味しそうなホクロがありました。
まあくんはその男の子の可愛いさに、一目で見入ってしまい、息をするのも忘れてしまいます。
「ーーーゴホッゴホッ。あっぶねー。僕まで死ぬとこだった。…あれ?まさかこの子 死んでないよねっ?!」
まあくんは一気に不安になりました。息はしているのかと自分の手のひらを男の子の鼻にかざしたり、どこかぶつけてはいないかと頭にたんこぶを確認したり、大忙しです。
その時です。
「んんっ……ん、」
男の子が目を覚ましました。
瞑られていた目をゆっくり開くと、キレイな琥珀色の目がうるりと輝いています。
「キミは…」
その水分多めの瞳と目が合うと、まあくんは何とも言えない気持ちになりました。なぜだか心臓の鼓動がドキドキと速まり、顔は熱を持ったように熱くなったのです。
「ねぇ。お腹空いた。」
「え?」
「お腹すいたんだけど、何か持ってない?」
起きながら自分のお腹をさする男の子。
まあくんは急いで籠の中からオレンジを1つ、取り出しました。
「はい、これ。美味しいよ。」
「え、剥いてよ。」
「ん?」
「剥いてくれないと食べれないじゃん。」
「くふふっ わかったよ。」
男の子の伸びやかな声は、まあくんの心に響きます。もう、この子の言うことなら何でも聞いてあげたくて、まあくんは一生懸命にオレンジの皮を剥きました。
ジュワっと色鮮やかな皮から広がる、爽やかな香り。フルーティーで美味しそうな香りが、あたりに広がります。
その男の子は、まあくんの手をジッと見つめ、まあくんがひと房を剥き終わると『あーん』と口を開きました。
その上目使いの瞳を見ていると、まあくんはドキドキを抑えられません。
それでもなんとか男の子のお口にオレンジを入れてあげると、男の子は『ん、美味しい』と言ってにっこりと微笑んでくれました。
「か、可愛い…」
「え、…可愛くてなんてないよ。」
思わず漏れたまあくんの言葉に、その男の子は照れたように俯きます。そんな仕草も堪らなく可愛くて『はい、またあーんして?』なんて、すぐにオレンジを勧めました。
美味しそうにオレンジを食べる男の子を見ていると、まあくんは心の底から幸せを感じていました。
「ほら、きみも食べなよ。」
「くふふっ 僕は大丈夫だよ。それよりキミがお腹すいてるんだろ?」
「クスクス。一人で食べたって美味しくないよ。ほら、あーんしてあげるから。」
まあくんの口元にオレンジを運ぶ男の子。その丸っこい爪まで愛らしくて、まあくんはついついその指ごと口に含んでしまいました。
「んっ…」
どこか色のある声。
男の子は恥ずかしそうに指を引っ込めると、まあくんから顔を背けてしまいます。
「ごめんね。あんまりにも可愛いかったから、つい。」
「だから、可愛くてなんて…ない。」
謝ってもこちらを向いてはくれなくて、まあくんの心はチクチクと痛みます。
「ね、ごめんね?…そうだ、キミ名前は?僕は相葉雅紀。皆からは、まあくんて呼ばれてるんだよ。」
なんとかして男の子の機嫌を良くしてあげたくて、まあくんは一際明るい声で話しかけました。
「ね?ほら、こっちを向いてよ。」
まあくんが男の子の肩に手を掛けると、男の子は俯きながらこちらに向き直ってくれます。
「さあ、教えてよ。キミの名前は何?」
まあくんは、この男の子が元気になって欲しかった。ただ、それだけだったのです。
でも、その男の子があまりにも柔らかく微笑んで、隠すことなく赤らむ頬や耳椨を見ていると
「名前は、……かずなり。皆からは『カズ』って呼ばれてて」
思わず、その子の額に
『ちゅ』と口付けをしてしまいました。
明日に続きます。
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